静寂と焚き火、そしてデュンケル――夜の森で出会った深い一杯

火の谷ビール(Hinotani Brewing)


※当ブログでは20歳以上の方を対象に、適切な飲酒の楽しみ方を紹介しています。未成年者の飲酒は法律で禁止されています。

山の夜は、昼の喧騒が嘘のように静かだ。
木々のざわめきも、虫の音も、すべてが時間をゆっくりと溶かしてくれる。そんな夜、僕の手元には「焚き火のデュンケル」があった。黒ビールの部類に属するこの一杯は、名前の通り、炎のゆらめきと共に楽しむために生まれたような存在だった。

【基本情報】

項目内容
スタイルデュンケル
アルコール度数5.0%
色合い深みのある赤褐色(マホガニーブラウン)
特徴ロースト麦芽の香ばしさとまろやかな甘み、焚き火に合う落ち着いた味わい
醸造元火の谷ビール(Hinotani Brewing)
所在地三重県津市美杉町

灯りの下に浮かぶ琥珀のような深み

テントの設営を終え、火を起こす頃にはすっかり夕闇が森を包んでいた。
着火剤に火を点け、薪がぱちぱちと音を立てて燃え始める頃、クーラーボックスから「焚き火のデュンケル」を取り出す。少し冷えた缶のラベルには、まさに焚き火を囲むような温もりのあるデザイン。自然の中で飲むには、これ以上ない選択だった。

グラスに注いでみると、深いマホガニーブラウン。焚き火の光にかざすと、赤銅色のハイライトがきらりと揺れる。泡はしっかりめで、きめ細かく、コクのあるビールであることを予感させてくれる。静かな森に浮かび上がるその色は、まるで夜の中にぽっと灯るランタンのようだった。

香ばしさの中に感じる安らぎ

鼻を近づけると、ローストされた麦芽の香りがふわっと立ち上る。カカオやナッツ、トーストのような香ばしさの中に、ほんのりと甘いモルトの香りも重なってくる。まるで朝に焼きたてのパンをひとかじりしたような、安心感のある香り。

焚き火の煙と相まって、どこか懐かしいような、郷愁を誘う空気が辺りを包む。香りだけで、すでに気持ちがゆるんでいた。

ゆったりとした時間に寄り添う味わい

口に含んだ瞬間、まず感じるのはスムーズな飲み口と、まろやかな甘み。そしてすぐに広がるロースト麦芽の香ばしさ。重すぎず、しかし決して軽くはない。中程度のボディ感で、飲みごたえがありながらも疲れない。まさにキャンプの夜にぴったりの一杯。

苦味は控えめで、どちらかといえば甘さやコクの方が際立つ。ビスケットやダークチョコのような余韻が舌に残り、次の一口が待ち遠しくなる。温度が少し上がると、さらに香りが開いて、奥深さが増してくるのも好印象だ。

焚き火と一緒に楽しむペアリング

この夜は、スキレットで焼いたソーセージと、アルミホイルで包んだじゃがいもをお供に。どちらも「焚き火のデュンケル」との相性は抜群だった。

  • 粗挽きソーセージ:肉汁のジューシーさと香ばしさがビールのロースト感と響き合う
  • 焼きじゃがいも(バター塩):素朴な甘さがモルトの風味とマッチ
  • 燻製チーズ:香りのレイヤーが増し、ビールの奥行きを引き出す

まさに、外で食べるからこそ成立する贅沢なペアリング。何か特別な素材があるわけじゃないのに、環境とビールの力でいつもの味がぐっと格上げされるのだ。

【星評価】

項目評価コメント
見た目⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️焚き火の炎に映える深い赤茶色が美しく、自然の中で飲むのにぴったり。
香り⭐️⭐️⭐️⭐️☆カカオやトーストのようなロースト香が心地よく広がる。
味わい⭐️⭐️⭐️⭐️☆甘さとコク、軽やかさのバランスが良く、じっくり楽しめる味。
喉ごし⭐️⭐️⭐️⭐️☆軽すぎず重すぎない絶妙なボディ感。キャンプシーンにフィット。
総合評価⭐️⭐️⭐️⭐️☆名前通り「焚き火と一緒に楽しむためのビール」。ゆるやかな時間にぴったり。

日常から離れるということ

普段、仕事や雑事に追われていると、なかなか「味わう」という行為に集中できない。だけど、こうして自然の中に身を置き、火を囲みながら一杯のビールをじっくり味わっていると、自分自身が少しずつ整っていくような気がする。

「焚き火のデュンケル」は、ただのクラフトビールではなかった。ゆっくりとした時間に寄り添い、焚き火の温度とともに心まで温めてくれる。そんな存在だった。

またこの場所で、またこの一杯と

夜も更け、焚き火もだいぶ小さくなってきた頃、最後の一口を飲み干す。冷えた夜気の中で、ほんのり体がぽかぽかするのは、ビールのアルコールと、それを共有した時間の温かさゆえだろう。

「次は秋に来ようか」
そんな言葉が自然と口をついて出た。
またこのキャンプ場で、またこのデュンケルと出会いたい――そう思わせてくれる夜だった。


※未成年者の飲酒は法律で禁止されています。お酒は20歳になってから、適量を守って楽しみましょう。

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